「急がば漕げマップ」について

「急がば漕げマップ」とは

「急がば漕げマップ」は、“急いで”いる場合に鉄道のみを使うよりも自転車を“漕ぐ”ほうが良いルートを表示するツールです。

利用者が出発駅を指定すると、首都圏の各駅への最適な移動ルートと平均所要時間(鉄道のみ利用時/鉄道+シェアサイクル利用時)を示します。さらに、自転車を組み合わせることで移動時間が短縮できる目的地については、その短縮時間も表示されます。

このマップを活用することで、利用者は健康増進や環境負荷の低減といったメリットがある自転車移動を気軽に生活に取り入れられます。また、通常の乗換案内サービスでは見つからない高度な移動ルートを発見することができます。

自治体や事業者は、ポテンシャルの高いシェアサイクルルートを見出すことができ、それを元に政策立案やマーケティング戦略の策定に役立てることができます。

「急がば漕げマップ」の構成

「急がば漕げマップ」は「到達時間マップ」「サイクルポテンシャルマップ」の2つの地図から構成されます。

「到達時間マップ」は主に利用者向けの地図で、出発駅を指定すると、首都圏の各駅への最適な移動ルートと平均所要時間を表示します。

「サイクルポテンシャルマップ」は主に自治体や事業者向けの地図で、自転車利用ポテンシャルの高いルートが分かります。

「到達時間マップ」の使い方

出発駅の設定

左上の検索窓に出発駅とする駅名を入力し、「出発駅に設定」ボタンを押します。

すると、その駅を起点とする首都圏各駅への平均所要時間が地図上に表示されます。

「到達時間マップ」の使い方01

目的地の選択と経路情報の表示

地図上で目的地の駅を選択すると、出発駅から選択した目的地までの経路情報が表示されるとともに、その経路が3種類、地図上に表示されます。

右上の「経路情報を隠す」ボタンを押すと出発地から各駅への平均所要時間を表示するマップに戻ります。

「到達時間マップ」の使い方02

自転車の利用設定

経路検索における自転車利用の諸条件を設定できます。

自転車移動の最小距離(1km~9km)

自転車移動の最大距離(2km~10km)

許容する追加時間(0分~30分)

鉄道+自転車の場合の所要時間が鉄道のみの場合の所要時間を下回っていないと自転車を利用しないのか、それとも多少であれば追加時間を許容して鉄道+自転車を組み合わせるのかを選択できます。

シェアサイクルのある駅のみ自転車利用

シェアサイクルポートが近隣にある駅のみで自転車を組み込むルートを提案する場合、チェックを入れてください。チェックをいれると、使用するバイクシェアサービス(HELLO CYCLING、dバイクシェア、両方)と、シェアサイクルポートの駅からの最大距離を選択できます。

「到達時間マップ」の使い方03

所要時間の表示設定

図示する所要時間を以下4種類から選べます。

提案経路での所要時間

鉄道のみの所要時間と鉄道+自転車の所要時間を比べ、後者が前述の「許容する追加時間(0分~30分)」以内にある場合は鉄道+自転車の所要時間を、そうでない場合は鉄道のみの所要時間を表示します。

自転車を使用しない場合の所要時間

鉄道のみ(自転車は使用しない)の所要時間を表示します。

自転車が有効の箇所のみ所要時間を表示

鉄道のみの所要時間と鉄道+自転車の所要時間を比べ、後者が前述の「許容する追加時間(0分~30分)」以内にある場合に、鉄道+自転車の所要時間を表示します。(そうでない場合は何も表示しません)

自転車使用による所要時間変化

鉄道のみの所要時間と鉄道+自転車の所要時間を比べ、後者が前述の「許容する追加時間(0分~30分)」以内にある場合に、「鉄道のみの所要時間―鉄道+自転車の所要時間」を表示します。値がマイナスであれば、鉄道+自転車の所要時間のほうが鉄道のみの所要時間よりも短いです。

「到達時間マップ」の使い方04

サイクルポテンシャルマップの使い方

ポテンシャル自転車利用人数の表示

サイクルポテンシャルマップでは、「到達時間マップ」における「提案経路」情報と、大都市交通センサス(令和3年度調査)のODデータを組み合わせることで、ポテンシャル自転車利用人数[人/日]を確認できます。

ここでの「X駅-Y駅間のポテンシャル自転車利用人数[人/日]」とは、大都市交通センサスのODデータの全員が「提案経路」を通ると仮定したときに、X駅とY駅の間を自転車で移動する人数を指します。

また、「X駅のポテンシャル自転車利用人数[人/日]」とは、大都市交通センサスのODデータの全員が「提案経路」を通ると仮定したときに、X駅で自転車に乗る人数とX駅で自転車を降りる人数の合計を指します。

専門的な言い方をすると、ネットワークにおける媒介中心性が高いノードとエッジを表示しています。詳しい解説はしくみで行っているので、興味がある方はご一読ください。

サイクルポテンシャルマップの使い方01

以下の条件で平均所要時間を計算し、「提案経路」を設定しています:

地図上では、ポテンシャル自転車利用人数[人/日]の多い駅のペアを太い線で結び、少ない駅のペアを細い線で結んでいます。また、ポテンシャル自転車利用人数[人/日]の多い駅を大きい●で、少ない駅を小さい●で表現しています。

許容する追加時間を0分に設定すると、自転車により時間短縮が図れる駅やその組合せのみが表示されます。

サイクルポテンシャルマップの使い方02

ポテンシャル自転車利用人数と供給能力との比較/二次交通の政策立案への応用

駅で表示するデータを「駅周辺シェアサイクルドック数[台数]」に変更すると、地図上の駅の表示が「駅周辺(500m圏内)にあるシェアサイクルポートのドック数(駐輪可能台数)」に変わります。ドック数が多い駅は大きい●で、少ない駅は小さい●で表現されます。

駅周辺シェアサイクルドック数は「シェアサイクルの供給能力」を示します。ポテンシャル自転車利用人数が多いのにドック数が少ない駅は需要に対して供給が不足している可能性があり、事業者はドックの増設を検討する価値があります。

また、ポテンシャル自転車利用人数[人/日]の多い駅間は自転車での移動需要が多いため、自治体はサイクリングロードの整備等を検討する価値があると考えられます。

「ポテンシャル自転車利用人数」のデータはバス等の二次交通の需要分析にも応用可能です。自転車利用ポテンシャルとバス利用ポテンシャルは相関があると考えられるため、自転車利用ポテンシャルが高いルートではバス路線の整備・増強を検討しても良いかもしれません。特に、自転車での移動距離が長いほどバスでの移動が現実的となるため、「自転車移動の最大距離」の設定を8km,10kmとしたときに高ポテンシャルなルートはバス施策の検討に値すると考えられます。

サイクルポテンシャルマップの使い方03

各駅の詳細情報の表示

地図上で駅をクリックすると、その駅の自転車利用ポテンシャルの詳細情報を確認できます。

距離別サイクリングポテンシャル

自転車移動の最大距離ごとのポテンシャル自転車利用人数[人/日]が表示されます。

ポテンシャルの高いリンク

高ポテンシャルな当該駅発着リンクが表示されます。

駅名をクリックすると到着駅の詳細情報を表示します。

駅周辺サイクルポート情報

駅から約500m圏内にあるサイクリングポートの整備状況や現在の空き状況がわかります。現在の空き情報は1分に1回更新されます。

サイクルポテンシャルマップの使い方04

制作者「西片トコトコ探索会」について

西片トコトコ探索会は、都市計画を専攻する大学の同窓の社会人4名で構成される有志団体です。休日や夜間にオンラインで活動しています。

私達は首都圏で公共交通を利用する中で、「既存の乗換案内サービスはかゆいところに手が届かない場合がある」という問題意識を持っていました。目的地まで最寄り駅から歩くだけでなく、少し長めに歩いたり自転車を使ったりすることで、より早く・安く・快適に移動できる場合があるからです。一方で、このような移動方法はややアクロバティックで、従来の乗換案内サービスでは検索にヒットしない「アウトロー」なものでした。

そこで、この「アウトローな乗換」を広く皆さんに知ってほしいという想いで「急がば漕げマップ」を作りました。

ちなみに団体名は、大学時代によく使っていた門の名前(西片)と、徒歩(トコトコと歩く)を含めた二次交通をフル活用して新たなルートを「探索」するという活動内容からつけました。